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目的・特色

目的

 原発災害の影響下にある住民の被曝に対する不安やストレスの軽減と質の高い生活のために、実際的な「放射線防護文化」を形成する実践モデルを明らかにし、普及・検証する。3年計画の2年目である本年度は、①放射線防護文化形成の実践方法について具体的に明らかにすると共に、②協働する自治体および保健師への相談・支援体制づくり、③放射線教育の福島県下の原発災害影響下の自治体への拡大を行う。

必要性

 福島原発災害の影響下にある住民の被曝に対する不安やストレスは大きい。国際放射線防護委員会 は、原発災害後の長期汚染地域住民の防護において、「公衆の健康と教育を担う専門職による国民的な放射線防護文化の普及が災害復旧の鍵」としている。

 「放射線防護文化」の形成のためには、情報提供や相談体制の整備など画一的対応だけでは不十分であり、必要なのは地域特性と人々の生活、刻々と変化する原発災害状況にリアルタイムに対応でき、住民の価値観を変えることのできる実際的実践であり、その具体的方法論の明確化である。

期待される結果

 協働する自治体住民の被曝に関する不安やストレスを直接的に軽減し、放射線防護文化の形成を促進する。また、放射線防護文化形成のための実際的方法論を明らかにでき、原発災害の影響下にある自治体に適用し、政策形成に反映することができる。また、原発災害における保健師を含む専門職、および自治体の役割を明確化できる。

特色

 国際放射線防護委員会*1は、低線量域の健康影響は不確実であり、科学、環境、倫理等日常生活のあらゆる側面を考慮した対処が必要な領域であると述べ、公衆の健康と教育を担う専門職による国民的な放射線防護文化の普及が災害復旧の鍵と強調している。しかしながら、「放射線防護文化」普及のための実際的実践に関する研究は国内外ともにみられない。

 看護職、特に保健師の活動(公衆衛生看護)は「集団・地域の生活者全体の健康増進をめざし」*2,3、対話による個別教育など個別支援から地域組織を活用した知識普及、施策化など集団支援まで同時に行う活動である。保健所は健康危機管理の拠点であり、東日本大震災においても自治体の保健師は初動期から復興期まで最前線で住民支援を行った*4。

 このような「公衆の健康と教育を担う専門職」である保健師と放射線防護専門家が協働して住民支援を行った報告はみられない。また、本研究で用いるアクションリサーチの手法は1990年代から様々な分野で活用されているが*5、災害復興および放射線防護の領域で実施した研究例の報告は国内外共にみられない。

文献
1. International Commission on Radiological Protection: Application of the Commission's Recommendations to the Protection of People Living in Long-term Contaminated area after a Nuclear Accident or a Radiation Emergency. ICRP Publication 111, Elsevier, London, 2009.
2. 日本公衆衛生学会: 公衆衛生看護のあり方に関する検討委員会 第1期・第2期報告書, 日本公衆衛生学会, 2005.
3. Quad Council of Public Health Nursing Organizations & American Nurses Association, 1999, 村嶋幸代,川越博美訳:公衆衛生看護の定義と役割 米国公衆衛生協会公衆衛生看護部会提言書,今改めて公衆衛生看護とは,13-29,日本看護協会出版会,2003.
4. 厚生労働省健康局総務課保健指導室:東日本大震災における保健師の活動について, 第5回地域保健県対策検討会資料, 2011.
5. 岡本玲子: アクションリサーチ, よくわかる質的研究の進め方・まとめ方, グレッグ美鈴他編, pp. 141-158, 医歯薬出版, 2008.

(2013年12月)

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